「板の端が浮いてきたような気がするんですけど、これってもう塗っても無駄ですか?」
そんなご相談をくださったのは、筑紫野市針摺中央にお住まいのA様。杉板の外壁が印象的な、落ち着いた和モダンのお住まいでした。築15年とのことで、木の風合いがしっかりと馴染んできている反面、紫外線の影響を強く受ける南面では色あせや板の反りが目立ち始めていました。
「ここ、なんとなく浮いてる気がして…前はもう少しピタッとしてたんですけど。」
「はい、たしかに板の端に反りが出始めていますね。紫外線や乾燥の影響で、徐々にこういう症状が出てきます。」
実際に板を指で撫でてみると、表面からはわずかに白い粉が。これはチョーキングと呼ばれる現象で、塗膜の劣化が始まっているサインです。
「今ならまだ木がしっかりしています。張り替えずに塗装で対応できる状態ですよ。」
「じゃあ、完全に手遅れってわけじゃないんですね。よかった…。」
家の周囲を一緒に確認しながら見えてきたこと
家の南側から西面にかけては、特に日差しの強い午後の時間帯に光が当たるため、表面の乾燥が進みやすい様子でした。板の表面はザラついていて、塗膜が残っていない箇所では、指先が木肌に直接触れるような感触がありました。
「ここ、前はもっと色が濃かった気がするんですよね。触るとパサパサしてて…。」
「はい、乾燥が進んでいる証拠ですね。塗膜が切れて、木がむき出しの状態です。」
西面では板の継ぎ目に沿って黒ずみが見られ、雨水が滞留しやすい箇所では軽度のカビも確認できました。ただ、板自体は健全で、打ち替えを必要とするような腐食はありません。
「黒ずんでるのって、やっぱりカビなんですか?」
「そうですね。湿気がこもりやすい場所なので、今のうちに対処しておけば広がる前に止められますよ。」
北側や東側の面は比較的きれいな状態を保っており、塗膜が一部残っている箇所も見受けられました。日差しが弱い場所はやはり劣化が緩やかです。
塗装の方向性とお客様のご希望を確認
「できれば、今の木の質感を残したいんですよね。前みたいな自然な色合いが気に入ってるので。」
「それなら、自然系の浸透型塗料が良いですね。木に染み込んで保護するタイプで、表面に膜ができないので質感がそのまま残せます。」
東側の壁では表面に細かなひび割れが見られましたが、板そのものの強度はまだ十分。水分を吸い込みやすくなっているため、放置すれば将来的に板の割れにつながる可能性がある状態です。
「耐久性ってどれくらいなんですか?」
「浸透型なら5〜7年で塗り直しが必要ですが、その分自然な仕上がりが保てます。塗膜型なら10年ほどもちますが、質感は少し変わってしまいます。」
「うーん、毎回塗るのは手間ですけど…やっぱり見た目は大事にしたいですしね。」
「そうおっしゃる方には、断然浸透型がおすすめです。今の状態なら下地処理も最小限で済みますし、きれいに仕上がりますよ。」
南側と西面にはやや日焼けと乾燥が進んでいるものの、全体としては塗装で十分対応可能な良好な状態でした。
杉板外壁を長く保つために必要なポイント
杉板の外壁は、定期的な塗装と点検によって30年以上使い続けることができる素材です。ただし、これは適切なメンテナンスを行った場合の話であり、放置してしまうと10年程度で反りや割れ、腐食が進行するリスクがあります。
チョーキング(白い粉)や色あせ、板の反りが見え始めたら、それは塗膜が切れてきた合図です。この段階で塗装を行えば、板を張り替える必要はほとんどありません。
塗料の選び方も重要です。浸透型塗料は木の質感をそのまま残せる反面、耐久性はやや劣ります。一方、塗膜型塗料は耐久性に優れますが、見た目に多少の変化があります。どちらが最適かは、見た目のこだわりや再塗装の手間をどう考えるかによって変わります。
また、劣化の進み方は外壁の方角によって大きく異なります。南面や西面は紫外線や風雨の影響を受けやすく、北面や東面に比べて早く劣化が進みます。よって、全体を均一に保つには、こうした差を理解した上での対応が欠かせません。
太宰府市、筑紫野市、小郡市、大野城市、福岡市東区、福岡市早良区にお住まいの皆さまへ。
もし杉板の外壁に手触りの変化や色あせ、反りなどの兆候が見られたら、それは「メンテナンスのタイミング」です。自然素材は正しく手をかければ、ずっと家と一緒に歩んでくれます。